Posted 21 Nov, 2019

Suzuki Hustler

パワーパッケージ

今回は、新開発だという各気筒2本の吸気ポートの両方に燃料噴射弁を組み込んだ3気筒エンジンのNAバージョン、ACG兼モーターからリブドベルトでクランク軸にトルクを加える簡易ハイブリッド、その2WD仕様を味見している。

分類としてはマイルドハイブリッドなのだが、そのモーターの駆動への入り方は、実用燃費に最も効く発進の「転がり出し」時には稼働せず、30km/hに達するあたりから上、60km/hかそれ以上までの速度域で、一定速度維持状態からアクセルペダルをステップ状にスッと踏み込むことでモーターが駆動に参加する。排ガス&燃費の“お受験”走行モード、それもこれまでの日本独自モードの中にある、ごく緩い加速であれば、このモータートルク上乗せである程度まではクルマを押す。しかし実際の路上で常用するような加速ではアクセルペダルをもう少し踏む、と、モータートルクが加わった直後にCVTの変速(もちろん減速比増大)が起こり、エンジン回転が上がる。せっかく駆動に加わったモータートルクが、ここでエンジンを加速させるのに消費されている。そしてその先はエンジン主導で加速が強まり、アクセルペダルの動きを止めても無駄に加速して、ちょっとアクセルを戻す、という流れになる。ただ、エンジン+CVTによる茫洋とした駆動にモータートルクを上乗せするだけの手法の中では、今までよりは若干上手になった感じがする。モーターのトルク自体が小さく、また使用範囲がかなり狭いということはあるけれども。

とはいえ、アクセルペダルに対してどう駆動力を作っていくか、という基本概念に関しては、アクセルペダルのストロークとストローク速度の組み合わせから「トルク・デマンド」を導く、というようなレベルにはとても到達していない。あくまでも車速とアクセルペダル・ストローク位置の関係だけで、モーターに投入する電流量を設定しているように思われる。少なくともそういう反応しかしない。電池容量がかなり小さく、それを引き出すポイントが限られることも伝わってくるが、少なくとも減速回生で貯めたエネルギーは次の発進の最初の一瞬に使わないと。また定速走行から駆動力を少しだけ上乗せしたい時に、エンジン回転を上げてから、ではなく、つまり変速比を固定した状態で、モーターのトルクで余裕駆動力を作ってクルマを押し、エンジン回転もそれにつれて上昇、もっと駆動力を強めるのに対応する、という使い方をしないと、何とももったいない。

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加速時のモータートルク上乗せ始まり、減速時の回生カット、どちらも30km/hを閾値にしている。多少上下はするが、明らかにそこから駆動が入る、そこで回生が切れると言う現象が繰り返し起こっていた。アクセルオフして回生が入り、そこに薄くブレーキペダルで減速を乗せ、その状態を続けて柔らかく減速していく状況では、30km/hを切った瞬間に回生が切れ、パワートレインが揺れるショックがあると同時に一瞬、減速が抜ける。緩加速の中でモーター駆動が入る瞬間にも同様に(逆方向だが)エンジンマウントの上でパワーパッケージが揺れるショックがある。

メーターパネルにある5セグメントのバッテリー残量表示が残り2セグメントになると、モーターアシストを使わなくなるようだ。いずれにしても、市街地幹線道路レベルの赤信号に向かう少し長めの減速で、まずはアクセルオフして回生を機能させ(減速度はかなり弱い)、そこに薄くフットブレーキを上乗せする、という走らせ方をすると、その一度の減速で電池残量セグメントが1つ増える。ここでもつバッテリー容量自体はかなり小さいことがわかる。それにしてももう少し“深く”使ってもいいのではないだろうか、と思う。

さらに細かなパワーパッケージの挙動について補足するならば、アクセルペダルを踏み込み量を一定に保っている中から、小さな加速や道の勾配増加に対してアクセルペダルを少し踏み増す操作が加わると、一瞬遅れてまずCVTが反応してエンジン回転が上がる。そこでアクセルを止めるかわずかに戻して駆動力を抑えようとしているのに対して、エンジンの反応、駆動力が波打ってしまう、俗に言うジャーク的な揺れを起こすことが折々に現れる。結局のところ、アクセルワークに対して、あるいはその時必要な、あるいはドライバーが求めている駆動力に対してパワーパッケージとしてどう反応するか、駆動力の微小な増減については「成り行き」であってデリカシーに欠ける。これももちろんこのクルマだけの問題ではないのだけれど。日本車全体に、この領域は世界水準に対して洗練が大幅に遅れているところであり、また作り手側の認識のレベルも低く、本来あるべき「ドライバビリティ」からはどんどん乖離して行っている。その一例に過ぎない。

車室空間

室内空間のレイアウトについては、基本寸法はおそらく前型そのまま継承。まずフロアを高めに置き(スズキの軽乗用車の中で「フロア・高」という設計パターンを踏襲したのだろう)、そこからのヒップポイントを少し高めに、ヒール段差もそれなりに取って、基本的には素直な着座姿勢を設定。それを包む空間もウィンドシールドを立てて、やや遠く。フロントウインドウとAピラーの傾きをもっと強くした車両とスカットルの位置を共通化すれば当然こうなるわけで、ウィンドシールドのガラスが遠く、サイドウインドウも立て、頭上の空間余裕も大きすぎるほどあるが、最近の軽ハイトワゴン系のような無駄な頭上空間とまではゆかない。高すぎない、ぎりぎりの「ちょうど良さ」である。

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こう組んだ空間の住み心地自体は悪くない、はずなのだが、今回のモデルは前型の印象を思い返すと、身体の収まりがもうひとつ良くない。その印象を生む大きな要因は、ドライバーズシート。座面中央部から膝下にかけてのクッションが中途半端に硬い。しかも膝関節裏に当たる座面前端部が角ばっていて、その部分、サブマリン現象を押さえるポイントに入っている鉄板よりも前のクッションが固い。そのために膝が裏から押し上げられるような感触が強く、これによって下半身の姿勢が素直に収まらない。ここだけでなくシート全体に面の張りだけが強く、とくに表面に付けた切り替えの凹みラインから内側、クッションの中央面が張っていて、これが座面もシートバックも体表面をかなり強めに押してくる。それに対して凹面ラインの外側、サイドに向けて盛り上げているが部分が柔らかい、というよりも支持剛性が低い。この中央と両サイドのクッションの硬さの組み合わせによって、とくに体重の軽い人の場合、シートの上にただ乗っかっているような座り方になりそう。私の体重でもうまく体表に沿ってたわんでくれない。表皮を一体成形にしてその内側からクッションを発泡接着した作りなのだが、その中での剛性コントロールがうまくできていない、というのが現状である。

このポジションだと(でなくても、だが)、ステアリングコラムにテレスコピック機構が欲しい。手・上腕を自然な形で体側に下ろした姿勢だと、ステアリングホイールがちょっと遠い。そこで手前に引こうとすると角度、高さともに下に動いてしまう。