Posted 21 Nov, 2019

Suzuki Hustler

ライド・コンフォート

路面のちょっとした凹凸にタイヤが叩かれるたびに、まずそのタイヤからばね下まわりが震えるブルブル、フルフルとした振動が足下と手に、そしてもう少し入力がきつくなるとそのショックからフロアまわりへ低周波のこもり振動が伝播し、それが室内全体に立ち上がって広がる。

とくに市街地、住宅地内などの道路によくある、補修跡が点々と続く舗装路面などで、この、路面にタイヤが叩かれるばね下の震えから室内の低周波こもり振動・音がかなり耳を圧迫し、かつ体を細かく揺さぶる。サスペンション・ストロークの中立付近の押さえも甘いので、ばね下の動きとは別に車体側だけがヒクヒク揺れることも多い。

一方、舗装のコンディションがかなり良い平滑路面でも、50~60km/hの速度域で、接地面に起こる振動がそのままボディ側に低周波のこもり音となって伝わり、そこから室内気共振を伴って耳を圧迫することがけっこう多い。このタイヤ転動をそのまま伝える車体振動は、前からも入ってくるが、同時にドライバーの腰から後、つまりリア・サスペンション入力点に入ってくる振動が車体フロアに広がり、それが室内気を加振して身体を包むように、とくに耳を圧迫してくるこもり振動となっている。これが30km/h以下になると、転動時にタイヤに生ずる振動数が当然半分以下になるので、そこでは車体フロアから室内気振動を生む共振系から外れるようで、こもり振動は出なくなる。つまり平滑度の高い舗装面から若干荒い程度の一般的な舗装路面において、こもり音・空気振動に関しては、40km/hを境にそれを越えた50~60km/hという日本における常用速度域でかなり強く現れる。

市街地のふつうの道を発進から40km/hあたりまで柔らかく加速、しばらく走って信号で止まる、を繰り返す中で、こうしたこもり音の基調にある低周波の振動が繰り返し発生していたので、その現象を観察してみた。発進・動き出しから先、少しだけ駆動力が加わっている時にずっと、フロントの足元から細かな震え振動が入ってきて、それが低周波音として耳に届く。タイヤが路面の細かな凹凸を踏んで転がる時、とくにこのドロドロ、フルフルが明確になる。ここで感じられるのはエンジンそのものが振れている振動と排気音が重なったものであり、それがタイヤのトレッド周ねじれ振動と同調している感触。ということはタイヤの周方向ねじれ振動を起点に、パワーパッケージが弱い駆動反力を受けてエンジンマウントが押し込まれると、そこでエンジン本体がマウントの中で揺らぐ振動と排気音が車体側に伝わってくる症状かと思われる。タコメーターの表示がかなり小さいので正確ではないが、CVTが微妙に変速しつつエンジン回転1500rpmあたりを維持している状況。ということは3気筒特有の回転1次振動は25Hzあたり。体感的にはまさにその周波数の震えである。この、フロア前方から車室全体に広がる低周波振動は、この速度域では他の振動源が少ないので浮かび上がってくるが、さらに速度が上がり、あるいは加速を強めたりする中でも何かのきっかけで発生している様子だった。

タイヤがもう少し大きな路面のアンジュレーション、うねりなどを踏んでいく時の車体の動き、揺れ、あるいは車体に慣性力が加わったときのピッチングやロール、それが連成した車体の動きなどに関しては、まず最初の動き出しが出にくい。入力を受けたどれかひとつの脚が素直に、滑らかに縮みに入ってほしい時に、脚よりはむしろタイヤのたわみでショックの角をいなし、入力が大きくなっていったんストロークが動き出してしまうと車体上下動の収まりが曖昧で、あるいはピッチやロールも動き始めてしまうと大げさな車体姿勢変化が出る…というあたりは昨今のスズキの、スズキだけではない日本車のほとんどの常、というものであって、これも先代にはあった走りのリズム感を薄めるだけの方向になっている。

リア・サスペンションとその入力点に関しては、脚と車体の相対運動が起ころうとする瞬間の動きが、まず最初にクニャッとして、そこで動きにくそうになり、さらに力が加わってやっと動くがそこでは腰がない、という一連の感触であって、これはひとつに車体側の局部剛性が低いと思われるが、同時にリアのトーションビームアクスルの車体側ピボットが日本車の通弊で車体中心線に対してかなりきつい斜めの角度を与えられているため、脚として揺動方向にトレーリングアームが回転する動きが出にくく、ピボットブッシュをたわませる変形が先に起こる、という症状もかなり強く出ている。タイヤからの振動や衝撃がそのまま車体骨格麺を震わせることになっているのには、この後ろ脚の動きにくさ、振動がゴム系を先に伝わることが、様々に影響しているはずである。

こうした路面感触の中で、40km/h以下、とくに30km/hかそれ以下で転がっている時には、一見、スムーズに走っている印象を与える。この速度域だけは、路面凹凸を踏んだ瞬間の“当たり”の角をなんとか丸める、言い換えれば逃がすことで、「ふんわりと走っている」感触を出そうとしたことは伝わる。特に日本の一般道の上の速度駅の下の方では。ここだけ何とかゴマかせれば、日本では「フツーのクルマ」だと思ってもらえる(クルマのことを知らないユーザーにも、販売店にも)、という認識が日本のメーカーの中に蔓延しつつある。そうなる背景には、「同級商品横比較」による評価と修正に終始し、社内でも“自動車の素人”の意見が強く、とくに「軽の世界」では、その浅いプロセスの中で「いちばん売れている」からとホンダN系をベンチマークにする。そういう流れが透けて見えてくるような脚の仕込みである。とはいえホンダN系ほどにはフワフワして頼りないわけではないのだが。