Posted 21 Nov, 2019

Suzuki Hustler

フットワーク

ステアリングを切り込んで旋回に入っていく手前、フロントが横移動を起こす段階で、タイヤ側の反応(手の動きに対する横力の発生)がかなり遅れ気味で、しかしいったん摩擦による横力が発生し始めると、そこからの力の増加、すなわちフロントの横移動はけっこう強い。その時にステアリングの手ごたえがもう少し重くなれば扱いやすのだが、手応えのほうはステアリング系の雑味に隠されることも含めて変化がわかりにくい。このCP(コーナリングパワー:スリップアングルに対するコーナリングフォースの立ち上がり)特性とSATの甘さについては、タイヤ内圧が指定圧より高いとより極端に、すなわち手ごたえが軽い中からフロントの横移動が遅れ気味にキュッと出る傾向が強まり、それに合わせて手を止めないと動きが合わないこともあり、一般の軽オーナーではクルマの動きがふらつくことが多くなりそう。逆に指定圧を下回るとタイヤケースのねじりが増えて応答遅れがさらに大きくなり、タイヤの反応がさらに遅れるので、これまた好ましくない。このあたりはタイヤそのものの特性によるところが大きいことは言うまでもない。

微小舵角から少し深く切り増す、そこから舵を戻して反対側に切り込んでいく、という一方向への、あるいは周波数的に左右に動かす操舵に対しても、ずっとグニャッとしたねじり感の多い手ごたえがついて回り、タイヤの接地面反応のヌタッとした遅れが刻々現れる。ただここでのねじり感触と遅れは一定のリズムなので、最近ここに問題が多い日本車(軽とは限らない)の中で、これはこれでまぁギリギリよしとしよう。

日本の道では日常的な60km/hぐらいまでの速度域で、交差点を曲がり込む、あるいはちょっとしたコーナーを入っていこうとする時に、このタイヤが横力を発生してフロントが動き、向きが変わり始めたその先では、操舵角(ステアリングホイールの回転角)に対してフロントの入り(横移動から内向してゆく動き)とそれが生み出すヨーイングが途中で弱くなり、フロントタイヤをターンイン初期にイメージしたよりは多めに切り込んだまま、その前輪が外回りするような体勢で旋回してゆくことになりがちだった。

さらに都市高速から高速道路に向かい、80km/hあたりまで速度を上げて緩いカーブを回っていく時などは、保舵力がやや軽すぎるようになり、フワッとしつつフラッとしがちな手ごたえの中で、横方向の動きも神経質にはなるけれども、一瞬それなりの旋回運動はしてみせる。しかしここでも、ターンインで向き変えの最初の動きが発生した時に現れたタイヤのスリップアングルと横力の増加の関係から考えると、旋回に落ち着くところではフロントタイヤの路面に対する摩擦とそこから出る横力、接地面とケース(タイヤ骨格)の踏ん張りとも、ダラッと逃げている感覚で、旋回に落ち着くところでは最初の舵反応からすると意外なほど大きくステアリングを切り込んだ状態で回っていくことになる。

ここでもまた、前輪の向き(実舵角)を決めて、横力やSATに対してその戻りを押さえるフロント周り全体のトー方向剛性が低く、前輪の、それも両方ともの実舵角が戻ってくる分をステアリングの切り込み量を増やすことで合わせている感覚、感触がある。その実舵角の戻りに加えて、前後タイヤのグリップバランスでも、求心加速度0.2Gに近づくあたりからは明らかにフロントタイヤ側が弱く、基本ステア特性としてもかなり強めのアンダーステア特性を示していた。この時、向き変えから旋回に移行してゆくところで、フロントのイン側からリフトする動きでロールが発生。そこでフロント外側輪へ荷重が偏り、それを受け止めきれない感じでタイヤがより大きなスリップアングルを必要とするようになる。これらの現象が重なり合って、舵をさらに切り込んで曲がっていく姿勢になるのである。

このあたりの資質、すなわちロールの出方、前後ロール軸の設定とダンパーの仕込みなどの合成による特性も、今回の車両骨格の弱点かと思われる。何よりまず、ボディの全体から局所へ、そして走行機能要素それぞれとの結合部まわりの剛性の意味、その取り方から原理原則に則って再考してほしいものである。

この車両運動の甘さ、曖昧さはまた、昨今の日本の軽&スモールカーのほとんどに見受けられる大きな問題点であって、動質の低下に直結するものであることを、作り手の側がもっと認識して、サスペンション設計から車体のロール、ピッチに関わるジオメトリー、リンク配置をきちんと組み込むことを望みたい。欧州発スモールカーの多くは、そこをしっかり考え、進化をつづけているのだ。かつて日本のメーカーの先人たちがゴルフI、IIを徹底的に味わい、解析し、それに追いつき追い越せと必死の努力を重ねた、あの時に回帰してくれることを切望する。

いずれにしても、こうして新型ハスラーはスズキ現行モデルの中では若干マシな、でも「いまどき、並の軽」になっているのであって、そこには先代ハスラーがそこここに感じさせた「ドライビングのリズム感」はもはやない。先代の弱点は、70km/hを越えるあたりからフロントにかなり明確な空力リフトが発生し、ステアリングが軽く、かつ応答と落ち着きも低下して、市街地や一般道を走っていた時とは「別のクルマ」になってしまうことだったが、それだけは若干良くなった感じがする。スズキの人々もさすがに少し気になっていたのかもしれない。ボンネットフード先端部の側断面形が丸みを帯びていたのを角ばらせたのが多少なりとも効いたのではないか。しかしこのモデルでも、都市高速から高速道路の走行では、タイヤからステアリングに伝わるSATが速度上昇につれて軽くなっていく現象は現れている。つまり良化はしたが、まだリフトは出ている、という症状である。