Posted 24 Jun, 2020

Peugeot 508SW

ライド・コンフォート

とはいえ、一般にワゴンボディに現れるような、ドライバーにとってはお尻から後の骨格がよれる感触、あるいは頭の後に空気振動が溜まる感覚、バックドアの震えや振動による低周波の車室内空気の低周波振動などのネガティブな感触は非常に少ない。

この車両に関しては、サンルーフのために天井を大きな四角に切り欠き、その部位の横骨とパネルがなく、そこに重くまた剛性を受け持たないガラスルーフを載せている、という車体側の事情もあって、フロントタイヤが叩かれた時の振動が、エンジンコンパートメント直後のバルクヘッド(ファイアウォール)面からフロアが後方に伸びるあたり、その両側に太いサイドシル、その中間に角断面フロアレール、それをクロスメンバーが連結している、そうした結節点のどこかに振動しやすいところができているのではないか、そんな感触である。フィーリング的には車体骨格の「箱」として振動が”溜まる”部位は、面白いことに、ペダルを踏んでいる足の踵が落ちているあたりからシートレールのための横桁がフロアを横断している部位あたり、前席乗員の大腿の裏下の少し前あたりまで、20cmぐらいの帯状になっているような感じがする。これはあくまでフィーリング。

サンルーフのあまり厚くない、すなわち手で押すと簡単にフワフワするファブリック製のサンシェードを巻き取って、頭上にサンルーフのガラスが露出した状態では、前述のビリビリ系の振動が少しだけ強まる印象もあるので、やはり室内に発生する振動、とくに空気振動に対して、ガラスサンルーフの影響はそれなりに大きいと思われる。

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速度があまり上がらない20~40km/h程度の幅の中で、路面衝撃を受けたタイヤからのビリビリ振動が強めに現れることを除いて、車室の中で体感する路面の感触、それを伝える振動、上下の揺れなどの動きは、セダンの508で味わっていた感触とほぼ共通するものに仕上がっている。少しゆったりとした、そして柔らかさやしなやかさを感じさせながら揺れ、そして収まる。これが前述の「かつてのプジョー及びフランス車が持っていた”乗り味”」。その”良き時代”のリズムに、より今日的な引き締まり感、動きを比較的しっかりと受け止め、押さえていく。そういうニュアンスが加わったものとなっている。

とくに中高速域(日本の)で、少し長周期になっている路面のうねりを通過した時などが特徴的であって、フロントはまず適度にうねりの形を感じさせつつも落ち込み、持ち上げの動きが現れる。ここで車体全体としては抑制されたピッチングを伴う上下の揺れが出る。ただこのワゴンボディ+パイロットスポーツ4の組み合わせでは、そこから現れるピッチングの動きの中に、クルマが全体にフワッと上下に揺れる印象が混じる。わずかにだが、伸び方向の減衰が甘い感じ。(言葉による表現がちょっと難しい…)

そこからフロントの動き(上下の揺れ)が収まりつつ、リア側では、車体が突起通過による押し上げから一度沈みこみ、それが戻って少し浮き上がり、そこから戻ってさらにもう一度少し沈んで落ち着いていく、というプロセスが続く。この上下の動きを、ダンピングを効かせて一発の揺れでで収めるのではなく、ちょっと揺れの波を残しながら、しかし人間にとっては「あ、今そういう道を通ったんだ…」ということが体感としてわかりやすく伝わりつつ、不快ではない。そうした揺れのパターンであり、しかもフワフワしてはいない。この「ちょうど良い揺れ」こそが、「かつてのフランス車の美点」なのである。

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もう少し細かく、508セダンとSWの揺れのリズムを観察、比較してみると…

主ばねのスプリングレートは、このSWの方が、セダンと比較して若干高くなっている、と思われる。フロント、リアともに、路面の突起を通過して車体が上がる動き、落ちてくる動き、その折り返しのリズムが若干速い。もともと欧州車のワゴンは、後輪上からリア・オーバーハングに位置する荷室にそれなりの重さの荷物を積載することを前提に、同じ車種のセダン/ハッチバック系よりスプリングレートを、とくにリアで高めるのが定石。この508系は、もともとの車体が大柄で、重いこともあるのだろうが、このSWでもリアのばねレートはばね上共振周波数の感触から見ても少し上げているが、あまり大きな幅ではなさそう。そしてリアだけを硬くするのではなく、車体全体をフラットに動かすためにフロントもリアに合わせて少しスプリングレートを上げている感触であり、動き方である。それが状況によっては、脚の突っ張り感や揺れのおっとり感が少し減った感じに現れているように思う。

とはいえ、より小さなサイズのプジョー各モデルにも見られるような、ハッチバックとSWの脚の締め方、主ばね設定の差ではない。

もうひとつ気になったこととしては、左右輪がそれぞれ別の凹凸を踏んだ時にロール方向の揺れがけっこうはっきりと出て、乗員の上体が、細かくだが左右に揺すられることがある。この508を含むプジョー=シトロエン系のラージ・プラットホームは、リアのダンパーが大きく内傾してマウントされているので、この「横蹴り」する動きが出やすい。しかしセダンではかなりのところまでは消されていた記憶がある。このクルマでは、とくにそのリアからロール方向の揺れが出ることが、日本の中速域で、路面がうねっているような状況において、たまにあった。感覚的に言うと、スプリングが少しだけ硬くなっている分で脚の初期動きが出にくいか、リアのトーインが若干大きく設定されているか。もしかするとリアにイニシャル・キャンバーをほんのわずかつけたか…(いずれも、質量が増えた車両後部の横運動を早めに押さえるために、後輪の横力立ち上がりを早く出す方策)、まぁいろいろ考えられる。