Posted 16 Jun, 2020

Honda N-WGN

フォットワーク

ビークル・ダイナミクスという視点においても全く同じ状況、すなわち私としては「これではちゃんと走れない」が、世間一般としては「今のホンダの、そして日本の軽は、多少の差こそあれ『こんなもの』で、ユーザーもそれで納得して買って、乗っています」となる。

ステアリングは、低速では回すと手ごたえが軽く、フワフワと柔らかく、速度を上げるとフワフワした頼りなさは変わらないものの中立から動かし始めるところだけ重さが増し、70km/hを越える速度域では中立の左右両側が硬い重さになってそこで固着することで、手を離しても中立で止まっている。でも毎回説明するように、それは「直進性」ではない。手ごたえがふわふわした感触になっているのは、電動アシストのモーターが、とくに回転方向を切り替える/折り返す時に引っかかったり、回転子の慣性モーメントが表面化してアシストの位相がずれてギクシャクするのを嫌って、電流を多めに加えつつ変動をぼやかしているのと、操舵機構全体の剛性が低いことの相乗ではないかと思う。

中高速で進路をキープしようとしても、どこにでもあるような路面変化・凹凸で前後のタイヤが何となくふらつき、クルマは小さくヨロヨロとする。それを押さえようとステアリングを動かそうとしても、最初の硬い手ごたえを越えて動かさないとタイヤまで微舵が伝わらない。そうなると一般のドライバーは、明確に進路がズレたのを認識した時だけ、カクンと手を動かす、という操作になる。

ここでも、日本の住宅地+郊外路の日常的な走行、そこで何となく走る速度域の中で、「曲がる」のは交差点程度で、そこでは速度も落ちているからステアリングを回せば何となく向きを変える。

問題はそこから先。もう少し速度が上がり、旋回系の運動を作る必要に迫られた時、である。

まず都市高速道路レベルの路線形状と走行速度であっても、何気なくステアリングを動かして0.1~0.15G程度の車線変更をしただけでも、フロントの動きに対してリアの追従~収束がヨーだけでなくロールとの連成で遅れることが体感され、それ以上強い動きを試みる勇気はちょっと出ない。しかし一応、もう少し強くメリハリのある横運動を作り、レーンチェンジを行うと、まずはかなり大げさなロールが起こる。それも基本的に車体内側が持ち上がるロール挙動であり、とくにフロント内側が持ち上がる動きが現れがちだ。

こうした動きの中でも、ステアリング回転角(操舵角)90度程度まで、車速60km/hあたりまでであれば、フワフワ、フニャフニャした手応えを感じつつ手を動かしたのに付き合ってクルマの向き変えの動きはなんとなく現れる。しかしその先の車両運動は基本的にヨー、ロールが連成しつつ発散する傾向であり、あるいはタイヤのグリップを失う方向であり、少しでも速く走ろうとすると不安感が高まる。もしこのクルマを走らせて、なんとなく不安になってスピードを上げられないとすれば、それはクルマの横方向の運動、それに合わせて発生するロールと、さらにピッチ、荷重移動の動きに信頼が置けない、一貫性や再現性がない、という症状に対する自然な感情である。

この「車両運動の危うさ」が具体的な形で現れた実走体験の一例としては、60km/h程度の速度で、旋回半径が小さめ、そして深く回り込むコーナーを曲がり込もうとした時。ステアリング舵角で90~100度のあたりからさらに切り増してゆくと、そこまでの舵角~フロントタイヤ横力の関係からすると、舵角をじわっと増しているのにフロントタイヤのグリップがすっぽ抜けるかのような感覚で、前輪の踏ん張りがちゃんと出ず、すなわち横力増加が急に頭打ちになり、旋回円を小さくするにはフロントタイヤの摩擦円(グリップのベクトルの大きさと方向)をデリケートにバランスさせつつ、速度を落とすしかない、という状況に直面した。しかもこの時の遠心力は0.3G程度から、回り込み運動を強めようとしたところで0.4Gまで増えたかどうか、というレベルにすぎない。もちろんドライの舗装路面であって、いくら転がり抵抗削減最優先タイヤといえども、タイヤの摩擦限界に踏み込むにはいささか低すぎる。ちょっと勢い込んで頑張るタイプのドライバーだと、コーナーの半径が連続的に小さくなるところで旋回円を小さくできず、外にはらんでしまう。そういう挙動である。付け加えるなら、この症状が発生したのはやや強い下り坂の回り込みコーナーだった。