Posted 16 Jun, 2020

Honda N-WGN

ライド・コンフォート

エンジンマウントは相変わらずゆるい。その上で揺れているエンジン本体の振動からして雑なのは、日本の軽自動車向け3気筒ユニットのほとんど全てに共通するもの。このクルマの常用速度域で何となく転がしている時、エンジン回転は1500rpmあたりに止まっていて、そこでわずかに負荷をかけるとボアボアとした低周波のこもり音がエンジンまわりから室内に、そのまま響いてくる。加速中など2000rpmを少し越えるあたりに上がって維持される(CVTが変速して速度を変えている)あたりでビリビリとしたパワーユニットからの振動が混じるのだが、その瞬間にルームミラーがビビリ、鏡の像が震える。

ストップ・アンド・ゴーの流れの中で止まった時、多くの状況ではアイドリングストップするので、エンジンの存在は消えるが、エアコン要件などでアイドリングを続け、少し負荷が加わっている状況(もちろん、エアコンのコンプレッサーを駆動しているだけでそういう状態になるわけだが)では、エンジンおよびそのマウント系から低周波のこもり音・空気振動と、ブルブルとした実体振動が室内に伝わる。

「3気筒エンジンには回転1次の振動があって…」(計算上は1500rpmで25Hz)などという言い訳は、最近の欧州系3気筒エンジンを体験すると、もはや通用しない。こちらは1気筒あたり排気量が220ccであるのに対して、彼方は400~500ccと「釜が大きい」のにも関わらず、である。ここにも「ガラパゴス化した」日本の軽自動車の進化停止状況が現れている。とくにホンダ車だけがこのエンジン振動騒音面で劣っているわけではない。全員、「右へならえ」状態である。

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このクルマも最近ずっと続く日本車の転がり抵抗削減最優先&コスト削減OEMタイヤを履いている(ブリヂストンECOPIA EP-150)。このタイヤの感触・特性からしてこの種の「靴」の典型であって、そこに自動車メーカー側から個別性能・特性の要件や修正が指定され、それに対応する設計変更が組み合わされることで、「何だかよくわからない」タイヤになっているのも、これまたいつものとおり。定常転がりのためにトレッドとベルト部分を硬く、しかしそうすると周方向のテンション=突っ張りが強くなるのに対してケース(タイヤ骨格)全体としては路面凹凸を踏んだ時にたわむことを求められる。これを縦ばね常数を落とすことで対応しようと、ケースのサイド部のそれもショルダー手前の狭いゾーンだけ”張り”を抜く手法を採っているのではないか(これもとくにこのタイヤメーカーの定石)。走って体感する、ケース全体の剛性バランス、たわみの受け方・戻り方の素性は良くない。当たりの一発目だけは剛性の低いところがたわんで逃がすものの、その先でゴワゴワ感やケース内部の気柱共振が続き、転がる感触もロードノイズもザラザラ、ゴワゴワしている。そしてそれらが室内に伝わってこもり、一部は耳を圧迫するような振動を含む騒音となるあたりも、最近のホンダの軽、そして日本の軽乗用車に共通するものになってしまっている。

クルマを転がしながら改めて、この「路面-タイヤ-車体の振動伝達系」を観察してみると、おそらく車体骨格自体の振動特性、とくに骨格を構成する鋼板面の震えなどの現出症状からして素性が良くなさそうに思われる。ただただCAEを”駆使”して、応力-変位などの解析ソフトウェアに頼って鉄板を薄くし、形状と組み合わせをいじりまわして、「衝突強度は既存品同等(以上)」「等価比剛性は既存品同等」となる結果を導いて軽量化することが「開発手法」となってしまっていることが、諸悪の根源であろう。これもまたホンダだけの問題ではなく、最近ではスズキの現用骨格群にも共通する「陥穽」である。本来はまず”real world”が、その中の"素材””現象”などが現実のものとしてあり、それをより深く考えるために、そしてそこに見出す方向性をより分かりやすく”見る”ためにCAEがある。しかしそうした基本的な道筋を踏まえないままの机上開発手法で「成果」が得られるかのような妄信が日本車をみるみるダメにしていっていることに、そろそろ気がつかなくてはいけない。とは言え中-高-大と連続する十年余の間に学生諸君に供している教育の内容に始まり、企業内の実務から組織のあり方、経営者の知的理解度の低さなどまでを総合して、もはやそうした正論が通じない状況に至っている、というのが実感である。その象徴的存在が「迷走する軽自動車」と言えそうだ。

いずれにしても最初にも述べたように、低速域のみ路面当たりがフニャッと柔らかいだけで、前後のタイヤが路面のアンジュレーションを越えるたびに、それぞれの輪荷重、そのばね上共振周波数(最近の軽乗用車の中でも低めなほう)あたりで2~3周期にわたってフワフワと揺れ続けることがけっこう多い。タイヤが路面を踏み、転動する中で発生する雑振動も絶え間なく室内に伝わる。ライド・コンフォートとしては雑味の多い、けして「心地良い」とは言えないクルマである。しかし現状の日本の軽同士の相対比較においては「最近はみんなこんなもの」「その中では柔らかい」という評価に収まってしまう。