Posted 16 Jun, 2020

Honda N-WGN

居住空間デザイン

現状の軽ハイトワゴン型商品としては類型的なパッケージング、なのだが、着座した印象としては若干フロアが高い。あと20mm、最低でも12~13mm、足が収まるエリア(前席だけでなく後ろも)の床面を低くした方が車室空間の中での着座姿勢の収まり、路面に対して車体・身体が動く感覚(とくにロールやピッチの軸まわり運動)とそれを集合させたところに形づくられる車両運動の把握、運転席から車両周辺を見渡した感覚と車両の「箱」としてのイメージが…などが整合すると思われる。もしかするとさらに背の高いN-BOX等と、床下骨格だけでなくその上のフロア高さなどまで変えていないのかもしれない。もしこのフロアの高さを、床下空間に強固な骨格を組むなどの使い方をしているのであれば、それはそれでひとつの設計思想となるのだが、車両を走らせてフロアに伝わる振動、震えなどを観察すると、そうした骨格の強固さなどはとくになく、あったとしても前面衝突対策程度に止まるものと思われる。

このフロアの上に、ドライバーとして比較的アップライトな姿勢を取って座り、シートのハイト調整をいちばんボトムの高さではなく少し上げた位置に設定した状態でも、ヘッドクリアランス、というか、「頭の上、天井まで」の残存空間高さは座高が高い人でも150mm、中背男性でも200mm近く残っている。そこを見上げて「こんなに天井が遠くにある必要はまったくない」と感じてしまう高さである。ただルーフの前端が曲面を描いて垂れ下がってきているため、前席乗員にとっては視界上部にその面が入り込み、フロントウインドウの天地寸法は若干詰まっているため、前を見ている状態では自分を包む空間がそんなに高く上に広がっているとは感じさせない。その点において、このカテゴリーの前席居住空間としては、開放感、明るさ等に若干欠ける印象が強い。

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今回の試乗車は「カスタム」というグレードであって、内装は黒・グレー系に統一。それにしてもインストルメントパネル周辺のスタイリングはそっけない。メータークラスターの高さとパネルが向いている方向を見ると、このクルマでも設計用ダミー(人体模型)を後方寄りに座らせ、シートバック後傾角を社内既定の角度に付け、胴体部分は現実の人体とは違って硬直した姿勢にセット−−ということはJM95(日本人男性の95パーセンタイルをカバーする体型サイズ)あたりの人体モデルを、CADの中で"お約束どおり"に置いた状態でアイエリプス(眼の位置の範囲を示す楕円)を描き、それで人体まわりの設計完了、としていることがうかがわれる。つまり、ドライバーの目の位置は後方で低め、それに合わせたメーターパネル面は中背かもっと背が低い、あるいは脚が短い体型だと、上から見下ろす感覚になる。

助手席前には、これも最近の日本市場向けスモールカーの類型として、携帯電話(など)を置くことを想定したトレイがあるが、底を多少丸めてあるだけで車室(乗員)側に壁・エッジはなく、ここに安直にものを置くことは全く推奨できない。こうした”置物的デザイン”、すなわち「クルマは走り、時に急減速、さらに衝突も起こし、その中に置かれた物体にとって各方向にかなりの加速度を生ずるものである」という大前提を放棄してて、運動しない空間ならば何とかそれなりに…という「見た目には便利そう…」な訴求要素をそこここに貼り付ける、というのも、最近の同種の日本車に共通するもの。