Posted 4 Jun, 2020

Daihatsu Tant

■タント X
第一印象~ライド・コンフォート

この仕様/車両の方がタイヤからの衝撃による「ドタン」感、瞬間的な突き上げがきつい。それに続くボディ全体のびびり、ブルブル感も。

具体的には、低速で荒れた路面を通過する時、40~50km/hでマンホール段差を踏んだ時など、ボディのガタピシ感、ビリビリ振動がけっこう強い。とくに前輪側がビリビリする。その要因として考えられるのは、当たり前ながらまずはタイヤの違いか。同じブリヂストンEP150なのだが、偏平率が異なり、当然ながらケース断面形状が異なることで、全体の剛性バランスは異なるはず。今の日本では、このサイズ、スペックのタイヤは何より転がり抵抗を重視して、ベルトのタガ効果=突っ張りがきつく、トレッドのエンベロープ(突起包み込み)がほとんど効かないまま、トレッドベースとベルトで路面を直接踏んでいるような感じすらある。ケース全体のたわみも良くない感触。偏平率が”ふつう”のサイズは転がり抵抗最優先、ちょっと偏平率を小さくしたサイズは「上級仕様向け」なのでたわみ部分を設ける、という棲み分けは、タイヤ本来の姿ではない。これも日本流の「お受験燃費対策」ゆえの歪み。それを走り始めから改めて実感させられた。

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都市高速に多い橋が続く路面、その橋脚ジョイントが連続する状況だと、前後それぞれにゴトン、ゴトンとショックが来たところで細くフワフワする揺れが残り、それに加えて前が持ち上がる感じのピッチングがけっこうたくさん出る。緩いカーブであっても旋回中だと、このゴトゴトとピッチングが重なり合って、車両の進路が落ち着かない。ドタンドタン、ドタドタ…の間にサスペンション・ピックアップ部分の局部変位・振動とボディ全体(とくにフロア)の震えが入り込んでくる。一般道走行でもフロントの起き上がり、落ち込みによる細かな上下動がかなり多い。さらにアクセルを踏んで足を止めるとその後にCVTによる加速が残るのもカスタムおよび日本の他の多くと同様で、そこでアクセルを戻して調節しようとすると、駆動力変化によるピッチングも現れる。かなり運転が難しいクルマである。かつ同乗者に不安を感じさせがち、かつクルマ酔いも多くなりそう。

フットワーク

ステアリングはこの仕様では中立周辺の異様な重さ、回すのに抵抗する重さなど、前回のカスタムよりさらに違和感が強い。タイヤのサイズ差、接地面形状(長さ)とケースのねじり変形特性の違いによるところが大きいと思われる(他に差異が生ずる要素は前輪荷重程度)。明らかに電動アシストのモーターとそのリダクションギアのところにかなりの噛み合い深さ、重さが存在する。モーターのアシストが入っても、据え切りに近い微・低速域でさえ、この重さが常について回る。精度感が低い上に、モーターの存在によってアシストが始まるところからはふわふわしている。ステアリングについてはそれなりの経験値を持っているつもりだが、あまりお目にかからない重さ、というより操作、動きに対する抵抗である。

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付け加えるなら、前回のカスタムもそうだったが、ステアリングの中立からの手ごたえの変動は、ギア類の噛み合いだけでなく、コラムシャフトに組み込まれているカルダンジョイント一対の位相精度も低いなどの要素によると思われる、またこのクルマでは、操舵の手ごたえと操作力、両方の左右差がかなりはっきり現れている(右切りで手ごたえが軽く、抜けてゆく感触。左切りが重く、抵抗感が強い)。アシスト機構に癖があってそのモータートルクで手に至る感触を上書きできないがために、左右差が手に伝わりやすい、という面もあるとは思うが。

軽自動車は、コスト低減がとくにシャシー部品にしわ寄せを生んでいることを知ってはいるが、そろそろ各社、「コストを一律に削りすぎてはいけない部品」を選別して、まずはステアリング機構とダンパーぐらいは、ちゃんと作ったものを載せてほしいものである。

この仕様だと、リア側のばねレートが若干足りない(柔らかい)と感じる、揺れのストロークが入りすぎる動きはあまり出てこない。もちろんクルマの動きとしては揺れ、振動、直進保持、旋回…どこをとっても曖昧なのだが、少なくとも路面のうねりを越えていくときの前後のストロークはほぼバランスしている。フラット感は出ないが、リアが凹凸を越えた後の最初の沈みこみはカスタムよりは小さい。

もしかすると、カスタムはリアの電動スライドドアが左右に組み込まれていたのに対して、この仕様は左側だけであり、その他の装備を含めてカスタムでは後輪荷重がかなり増えているのに対してばねレートを合わせ込めていないのかもしれない。揺れだけでなく、車両の動き全体から見てもその可能性は高い。

横方向の運動を起こす中で車体の動きのバランスとしては、軽く横Gが出ただけでフロントのイン側がおおげさにリフトしようとするロールが発生する。その一方でダイアゴナル(斜めの軸)にリア側が若干沈みこむ動きもあり、ロールのバランスはいささかよろしくない。つまりサスペンションのロールに対するジオメトリーと車体の重心位置、車両の前後左右の重量配分などの基本づくり、それに対応するサスペンション・セッティングに改善の余地あり、ということになる。これは軽い横運動、日常的な旋回などの中で簡単に露呈する。

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この仕様では、クルマに横方向の運動を起こす中で左右非対称感はカスタムよりむしろ強い。電動ドアが片側だけ、という左右重量差が現れてくるのだろうか。柔らかく左右に動くスラロームをかけてみると、左後輪に荷重をかけていった時に、脚が若干つっぱる感触がある。左右のばね反力の現れ方が違う感じ。主ばねのスプリングレートは変えていないだろうから、自由長を変えて、ばね常数は同じでも左右でプリロードが違うのかもしれない。重量とばね反力の作用は異なっても、おそらダンパーは左右同じものではないか、というところまでは推測してみたが。

そのせいだけではないと思うが、この車両は頭を右に降る時がちょっと動きが軽く、逆に左に向きを変える時にクルマ全体が若干突っ張った動きになるような印象を受ける。ただそれは動き出しの瞬間で、その先で車両全体にロールとヨーレイトが発生するところでは、左旋回の方が軽く動き、右旋回の方が突っ張り感が現れる。主にリアから出る動きの差のようである。これは4輪各脚において最初に力が入った時のストロークの動き出しと、そこからダンパーを少し深く縮ませていく時のストロークの出方の違いかと思われる。明らかに動きは違うのだが、もう少し検証が必要。

なお、この仕様(オプション少ない)でも「車線逸脱抑制制御」が標準で組み込まれているのだが、旋回を深める方向への操舵が、都市高速のなんということもないカーブを普通に、0.1~0.15Gあたりで旋回している最中に突如ふらっと介入してくることが何度かあった。それも、クルマ側の転舵速度がけっこうきつい。状況把握できない人だとびっくりする可能性がある。旋回Gを少し上げるとこの制御が(車線端に接近しても)反応しなくなるような時もある。何を閾値に、何を狙って介入してくるのかがなかなか”見えて”こない。