Posted 31 May, 2020

DS 3 CROSSBACK

居住空間のデザイン

キャビン・パッケージングとしては、コンテンポラリー・ヨーロッパ流スモールカーのスタンダードをきちんと構築している。天井の高さも適度。空間印象としては通常のBセグメント・ハッチバックのキャビンそのものを、ちょっと高いところまで持ち上げた、と言う着座感であり居住空間である。

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ドライバーからの視界印象としては、ボンネットフード左右に作ってある盛り上げ造形とエッジが若干邪魔で、フロントまわりの車両感覚が少しつかみにくい。「おでこ」が盛り上がっている感じ。

その運転席、日本向けはとりあえずRHD(Right Hand Drive)、いわゆる右ハンドル仕様のみとなる。そこに収まってみるとドライビング・ポジションとしては、このサイズのフランス車にはままあることだが、ペダルが20mm程度左にオフセットしている。慣れはするが、もう少し正面にあってほしいところ。ステアリングはほぼ着座姿勢=シートのアライメントに正対しているので、ペダルまわりの違和感がより強い。こうしたRHD仕様の場合、ブレークペダルのタッチに甘さや微妙な踏力変化に対する摩擦力の追従のずれなどが現れがちだが、そこはまずまずOK。

後席はなかなか収まりが良い。ルーフ後部の丸み、その内側の天井の丸いえぐりも効いている。いうまでもないことだが、日本のスモールカーとは比較にならないレベルの居住性であって、シートもサイズ・厚み・形状ともにちゃんとしたものであり、ヘッドレストも支持ロッドがちゃんとシート骨格の中まで入り、シートベルトの位置にも問題はない。

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シートに関して、ドライバーズシートは、表皮からその一層奥のクッションまでを合わせた柔らかさとそれによる身体表面へのなじみがなかなか良い。長時間の乗車にもまったく問題は生じない。身体基本部位への支持も適切。ただし斜め交差のステッチが全面に入っているのは身体表皮・表層筋への当たりでいうと若干気になるところがある。もちろん、DS5の背中・尻・大腿部にかけて角のはっきりした正方形ブロックを連続させたパターンのようなNGレベルではない。

ドアハンドルのギミック=車体面に埋め込まれたところまで引き込んだ状態がデフォルト。リモコンキーを身体に付けた状態で近づくと前端をヒンジに後端がせり出す。軽く押す動きでロック…などはなかなか面白いし、演出としてはよくできているが、もしもシステムやメカニズムがフェイルしてレバーが外に出てこなくなったら…と想像するといささか不安も残る。

まとめ

まずプラットフォームのポテンシャルに関しては、日本の同じクラスのクルマたちがとても及びもつかない資質を有している。しかしそれはけして凝った設計やコストをたっぷりと掛けた造りではなく、シンプルに、やるべきことをまともにやった、そういう思考の成果である。

その一方でブランドとしての走りをどう表現するか、という難しさにぶつかっているようにも思われる。このプラットフォームでフランス流の実用スモールカーを普通に仕立てたらどうなるか、そちらが見たい、味わいたいという思いが強まってきた。

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別の視点。1世代前のプラットフォームを使っていて、その分だけ仕込みがよくわかっている、ということが伝わってくる仕立て、その成果としての走りのリズムの良さ+ドライビングの組み立てのシンプルさ+クルマとの対話性の良さにおいて、今、このクラスのクルマを、とくにフランス車を、非ドイツ系移動空間を日本で買おうというのであれば、私の個人的な選択はC3エアクロスになる。あるいはまだ手に入る先代DS3、それもスポーツ系のバリエーションも、このタイミングで選ぶ意味がありそう。その連想の中で味見体験の記憶の中から「味の良さ」の個人的記憶が蘇ったのは、かつて導入されていたDS3カブリオレ。あれをもう一度探して味わい直したい気分にもさせたれた。DS3クロスバックは、その資質の共通性から良き先輩たちとの記憶まで誘発させる新人、というところだろうか。

走行距離 1628km 車両表示平均燃費 15.6km/L 同平均速度 66km/h
実給油量総計 96.13L 平均燃費 16.94km/L

WORD : 両角岳彦