Posted 26 May, 2020

Peugeot 508 Sedan

■1.6 gasoline GT Line
パワーユニット

排気量1.6Lのガソリン・エンジンに関しては(当然ながら今日のエンジンとして気筒内直噴である)、このサイズ、重量の4人がゆったり乗れる空間を動かすのに十分な力感を発揮する。同時に中高速域でスピードを一定に近く保って長い距離を移動するときの燃料消費も少ない。日本の高速道路で、1人乗りであれば、あるいは2人乗り程度であれば、1Lあたり16〜18kmの瞬間燃費を表示しつつ走ってみせる。こういう状況での燃料消費量に関してはディーゼル・エンジン仕様よりも若干多いかなというレベルで、ガソリンと軽油の炭素量の違いを考えれば、CO2排出量に関してはほぼ同等だと言える。

細かく観察すれば、まず何気ない発進の瞬間から車速が乗るところまで、エンジン回転で言えば1800rpm手前ではさすがに押し出す力が若干細い(もちろんディーゼル仕様との比較において)。少し深く踏み込めばちゃんと余裕駆動力が出て何ということもないので、これはこれでかまわないが、燃焼1発ずつのベーストルクはさすがに排気量なりであることは感じ取れる。そして日本的な速度域の巡航からの、あるいはアクセルオフからの小さな踏み込みに対しても、やはり立ち上がってくるトルクが少し細い感触があるのは、アクセルペダル踏み込みに応じてシリンダー内にガソリンを直噴するタイミングとに量に関して、若干おっとりと、すなわち吸入空気量ベースの燃料マネージメントをベースに組み立てている感触はある(最新のドイツ系直噴ガソリン・エンジンの多くが、アクセル踏み込み初期に筒内噴射を活用して瞬発力を作っているのと比べて)。しかしそれは最初の一瞬だけであって、その先でターボの過給圧が立ち上がってくる手前からちゃんと力感が増え、そのまま踏み込み量を維持すると、過給によるトルクの二次曲線的立ち上がりにつながっていくので、これはこれである種の「おっとり感」として受容できる。

ここでエンジン回転が2000rpm回っている状況からであれば、アクセルの踏み込みに対して吸入空気量増加に燃料噴射を合わせた最初のトルク立ち上がりに続いてターボ過給がすぐ立ち上がり、強くクルマを押し出す力がレスポンス良く立ち上がる。

ちょっと強めの発進加速で、1速から2速、2速から3速へのシフトアップでは、ディーゼルに比べて当然ながらエンジン回転を少し引っ張るので(1→2速だと2500rpm前後になることが多い。もちろん運転のしかたにもよるが)、次のギアにエンゲージした瞬間の回転落差、エンジン音と微妙な駆動力の変動がディーゼルで同じ加速をした時よりも少し大きい印象。この面でもディーゼルの方が日常的な走りのリズム感が良い。エンジンマウントも、ディーゼルの方が合わせ込みが良い感じ。回転を少し引っ張る分、アイシン8速ATの変速の瞬間の摩材の接触、回転合わせがわずかだがこちらの方が時間がかかる印象もある。

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市街地レベルの速度域が低い走行状況だと、ダウンシフト時に回転同調のためクラッチミートを若干遅らせていて、そのエンゲージの時に引っかかる感じで減速度がちょっとだけ強まることが時々あった。また日本の都市高速でしばしば現れる、小刻みに動く渋滞の中では減速、停止、再発進加速の中の変速が少しギクシャクしたりもしていた。いずれにしてもかつてプジョーが、そしてフランス車がATを使い始めた頃とは比較にならないディテールの話であって、変速とエンジン回転の変動については、昨今の日本のCVT一辺倒の製品群、より大きく重く遊星歯車組のATを使っている製品群との比較においては、はるかにマトモである。

ここでもまた、このクルマの現段階でまでの動質仕上げにおいて、プジョーの人々はディーゼルを中心に進めてきたのではないかと思われる。開発戦略として、それはそれで正しい。

高速道路を主にした移動 387kmで25.7L給油

この時のオンボードデータ表示 387km 平均燃費18.1km/L 区間平均車速77km/h

トータルでは915km走行 車両側表示平均燃費16.6kmL(最初の満タンのレベルが確認できていないので、実測値としての確認はできず)

ドライビング支援システム

最後にADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)についても少し実況しておく。

まずレーンキープ・アシスト。これはタイヤの仕様・特性はもちろん、内圧によっても変わってくるものなのだが、今回の2仕様ではエンジンが異なっていても動きの現れ方に大きな差はなかったので、まとめてレポートする。

車線内保持機能をオンにすると、世界最良と言えるレベルまで行かないが、ほとんどの日本車よりも上手な制御であって、高速道路の巡航程度であれば左右にカクカクとステアリングが動くことは少なく、必要なだけ舵を切ってそこで止めてラインをトレースして行くことはできる。車線逸脱に対する介入操舵のタイミングが若干遅いのはやむを得ないし、操舵系をねじってクルマの動きを待つ操作もまだまだ入れ込めてはいない。むしろステアリングの中立付近に電動アシストがブレーキをかけているゾーン、回そうとすると手ごたえが硬くなる、いわゆる直進保持制御があって、これを含めて進路維持をしている。

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またプジョーとシトロエンの資料によると、この車種も含めてレーンの中央保持だけでなく左右にオフセットした位置を設定すればそこをキープする、という機能があるとのこと。試してみると、レーンキープ機能の主スイッチをオンにして制御に入る瞬間の位置を、その車線の中で走り続ける中では保持しようとする。ただし路面の状態がかなり良く、タイヤが路面の凹凸や傾きを踏んで車が左右に揺らぐ動きを出すことが少なく、かつ路肩の状態なども含めて白線のコンディションが良く、ほぼ直線の状態が続く…という条件が整っていれば、ということのにようである。ウィンカーを出してレーンチェンジをし、新しい車線に収まる、という一連の動作の後など、最初にセットした時の車線内位置が再現されるか、何度か試したがまだよくわからない。アルゴリズムとしては、一度セットした後、繰り返し狙ったところを再現するというものではないようである。ここは機会を見てもう少し確かめてみようと思っている。

ここまでの確認は100km/h(メーター読み)かそれを少し越えるあたりの速度域、彼らにとって日常一般道の速度域でのものだが、70~80km/h領域に速度が落ちると、操舵介入・修正のタイミングずれが少し増える。日本車ほどではないがけっこう小刻みに、転舵速度高め、操舵周波数も少し高い動きで干渉操舵が入ってくるケースがあるのだ。制御としては「近くを見ている」様子が強く、操舵介入頻度はけっこう高くなる。彼の地では使われる機会が意外に少ない速度域だが、日本で言えば高速道路の屈曲区間を制限速度域で走る状況や、少し高いペースを保てるカントリーロードの緩やかなカーブの連続などで、きれいな軌跡と運動を描くべく手を動かす、そんなステアリング操作には時々邪魔してくる形になる。世界的にみると、このあたりがもう少し巧みな車種もあるので、ここはちょっと惜しい。もちろんレーンキープ・アシストを切るとこの干渉による乱れは減るのだが、アダプティブ・クルーズコントロールとともに、レーンキープ・アシストを入れておくことは、このクルマのロングツーリングを得意とする資質をより引き出すことにつながるのだから。

またかなりの距離を走った中で気がついたこととしては、レーンキープのための車線マークがかすれているところなどでは、どうやら夜間の方がそうしたレーンマークの認識が得意なようである。いうまでもなくカメラの画像処理アルゴリズムによるものと思われるが、ここはどのサップライヤーの、どの世代の、あるいはどこに起源・開発の流れを持つシステムを採用しているか、の問題である。

ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)は、やはりヨーロッパらしく前者との時間距離を基準にしている様子で、車間設定が最短の設定で車間時間2秒以上をキープしようとする。とくに高速巡航の中で前走車を見つけたときの減速が若干ぎこちないが、市街地領域までちゃんと作動し、減速に入るタイミングとそこからは柔らかく減速Gを立ち上げて距離をコントロールするというところのまとめはまずまず。前方車両の存在と速度差を確認したところで、初期の減速をもう少し明確に入れた方がいいかな、という程度。その一方で、日本の高速道路の右カーブを追越し車線で走行している中では、大型トラックなど隣の車線を並走している大型車を自車線内の前方車両とミスジャッジしたり、迷ったりするケース、あるいは左旋回における右側の路肩などに何かを検出して減速に入る瞬間が少しあった。でもこれはまぁ現状の欧州車平均レベル。車線と障害物の複合判断、画像と距離の2種類のセンサーを組み合わせた状況判断は、まだ進化の余地を残す、ということだが、日本車でも今は同じようなレベルのものが多数派。

前走車両追従から前が空いたときの加速度はわずかに強いかな、という程度。前方に車両を見つけて速度変化がぎくしゃくしそうなのを抑えたり、周囲のクルマの動きを予測しつつスムーズに再加速に入る、といったあたりをドライバーがアクセルワークで補助してやれば、それなりに自然な形で使える。

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アダプティブクルーズコントロールを使っていて気がついたことがもうひとつ。ドライビングパターン選択を「エコ」モードにすると、ドライバーによるアクセルペダルの動きに対しては、エンジン・トルクの立ち上がり反応をかなり控えめに、おっとりした方向に変える。踏み込み初期の応答をおとなしくする、アクセル=スロットルの関係における非線形性を強める設定である。これはこれでいいのだが、エコモードでACCをオンにしていると、前走車両の姿が消えたところからノーマルモードの時と同じトルクの立ち上がりで加速する。VWなどはエコモードではACCの再加速ものんびりとさせるのだが。これは次の段階で対応してくるものと思われる。

いずれにしても、こうしたレベル2のドライバーサポートこれまではフランス人の得意分野とは言えない印象だったのだが、プジョー=シトロエンとしてもADASに本格的に取り組み始めた印象が伝わる。ただ現状では、周辺状況認識デバイスとその処理アルゴリズム、運転制御の基本的なロジックなどについては、欧州系サプライヤーの現行品を導入し、現実の路上での制御内容に関して自分たちが不愉快でなく走るものにまとめている、と言う印象である。とは言えしばらく前に比べれば格段にリアル・ドライビングへの対応が進んでいる。日本車のほとんどに覚える運転支援が介入してくる時の違和感、ドライビングというものの基本的な理解が浅い、あるいは間違っていることが露呈する瞬間はほぼ現れなかった。

WORD : 両角岳彦