Posted 26 May, 2020

Peugeot 508 Sedan

■2.0d GT
パワーパッケージ

ディーゼルエンジンはプジョーの4気筒現行世代。すなわち排気量2Lに可変ジオメトリー・ターボ過給を組み合わせる。圧縮比は16.7とちょっと高い(もう少し下げたい、の意)。ただし冬季低温・多湿などの条件までカバーしようとすれば、ここはコンサーバティブな設計になるのも理解できる。NOx対策はアドブルー+SCR。これにアイシン8速ATを組み合わせている。

今日のディーゼルエンジンとしては普通の仕上がり。全体に、ということは、発進の瞬間から少し深くアクセルを踏み込んでダッシュ的加速に移るあたりまで、どちらかというとおっとりしたレスポンスをみせる(とくにドイツ勢との比較では)。しかしその中でトルクの厚みは十分にあり、またディーゼル燃焼音は明らかに伝わってくるものの、そしてエンジンそのもののブルブル振動も若干は伝わってくるものの、それは「仕事をしている」という感じで受け止められる素直なものであって、ドライビング・スキル、ここでは右足のデリカシーがあまり高くないドライバーでも自然体で扱える、アクセルペダル→燃料噴射量→燃焼発生・トルク発生・増大とつながる特性に仕上げられている。

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もちろん、今日のコモンレール直噴のディーゼルであれば、もっと瞬時のレスポンス=トルク発生が可能だが、この「ちょっとのんびり」が昔からのフランス流なのであって(相対的にエンジン排気量が小さいクルマづくり~それに応じたドライビングが、フランス気質だったことからの流れ)、ドイツ系といえども、VWの「ディーゼルゲート」以降、アクセルストローク初期の瞬発反応は抑える方向にならざるをえない。これからのエンジンのトルクデリバリー反応はこのあたりが標準、という時代になるだろう。

いずれにしても、何気なく走らせていて、すぐに馴染んでしまう、それでいて必要なときには踏み込めば、踏み込んだ分だけ応える、というパワーユニットである。

ATは、まずスタートプロセスから、さらに速度を上げたところでもトルクコンバーターの滑りにほぼ無駄なものが感じられず、ほとんどの領域で直結になっていることがわかる。ただし多分、トルクコンバーター周辺の入出力系統の中で回転方向のトルク変動を吸収するメカニズムの容量が若干足りない。これはZFのATユニット群に比べての話だが。それもあって、変速そのものは無駄な遅れがなく、ショックも小さいのだが、クラッチミートの遅れを若干感じなくもない。とはいえトルクの大きな(ということはトルク変動も大きい)ディーゼルエンジンの伝達系としては、これはこれでよくまとまっていると言うべきではある。

燃費もそれなりに伸びるし、実用的なツアラーとしてのパワーパッケージと受け止めれば、昔に比べればずいぶん洗練されたものだと思うし、今日の標準の中でも水準を上回るレベルと言える。問題は今後のエミッション・コントロール、Euro7と実走テストモード=RDEへの対応になるだろう。

まとめ(セダン/ディーゼル)

基本的には、前後ばねレートが必要十分な中で柔らかく、ダンパー減衰特性が適切、ミシュラン・パイロットスポーツ4との組み合わせまでが、資質の仕上げに効いている。タイヤの接地面を常にしなやかに路面に付けておくこと、その接地面内の荷重変動を押さえること、これがクルマの運動能力を高く、素直なものにする基本であり、しかもそれはドライバーはもちろん移動を共にするヒトにとって、走りを感じつつも快適な揺れになる。つまり操縦性安定性と振動系乗り心地は、相反するどころか、タイヤ接地面の中からクルマを見れば「同じもの」なのだ。それを実証するクルマなのである。でも、こういうふつうのフットワークがむしろ少数派になってしまった。タイヤが路面を踏んで転がり、その上で身体を収めたキャビンが良いリズムで揺れる。自動操縦の時代になっても、この基本は変わらない。

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空間のサイズ、着座姿勢と居住性、移動の能力と燃費など「実用品」としてこれに匹敵するのはパサートだが、あちらは明らかに「ツール」。実質優先であって、それはそれで重要なキャラクターであり、そこに存在意味がある。こちらはそれにもう少し「色気」が加わる。「ヒトの手が触れつつ造られた感触」「どことなく人肌の柔らかさ、暖かさがある」とでも表すべきか。その一方で道具としての信頼感はちょっと下がる、かも(長年の経験から来る感覚だが、使っている部品の開発製造工程が世界的に均一化しているので、昔のことは引っ張り出すべきではない)。まぁ、これに乗ってしまうとパサートは無機質に感じる。しかし、こういう保守本流・万能型の乗用車が欲しければ、今の日本市場では二者択一である。

高速道路を中心に文中にあるようにかなりタイトなワインディングロードを何往復もして、都市内も走った790km(全体平均速度71km/h)で満タン給油量52.25L 平均燃費16.6km/L