Posted 26 May, 2020

Peugeot 508 Sedan

■2.0d GT

ヨーロッパのアッパーミディアムサイズ・ファミリーカーの中核であるフル4座セダンの最もモダンな形、と受け止めることができるクルマ。

いかにも現代的ではあるが、最近の一部のクルマのように装飾過剰では無いエクステリア・デザイン。その姿形を外から見て、「こんな感じの空間だろうな、こんなふうに走ってくれると良さそうだな…」というイメージが描ける人にとっては、ほぼそのとおりの”クルマ”をストレートに仕立ててある、最近としては珍しいプロダクツ。かつて我々が経験していた「フランス車らしさ」が、全てとは言えないまでも大事なところで回帰しているのも、好感が持てる。

「見た目どおり」ということは、まずドアを開けて乗り込むと、4人の大人が余裕を持って前後に座り、それなりの荷物も積んで、半日あるいは1日をかけてかなりの距離を旅する。そういう乗用車本来の、それもアッパーミドルクラスのサルーンだならばこそ、できてほしい実務が可能な「クルマらしいクルマ」。その意味では、(残念ながら)最近少なくなったキャラクターの1台。

ライド・コンフォート

ここからまず日本の高速道路クルージングにおけるこの車の振る舞いを、ドライバーズシートからレポートする。

決して静粛な車ではない。タイヤが踏んでいる路面の舗装が少し荒れているような状況だと、タイヤノイズとしてざらざらとした感触の音が伝わり、耳に聞こえる。足元やステアリングに伝わってくる路面のざらつき感もそれに同調して強まるものの、それがボディシェル、あるいはシートに伝わって、不快な振動だと感じさせることはほぼない。

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エンジン音も、ディーゼルなりに「仕事をしている」燃焼~排気音がちゃんと聞こえる。

これらは「クルマが走っている」からこその「音」。聞こえるべき「音」で、不快には感じない。つまり「ノイズ」とはいえないことが実感できる。しかも会話音声、オーディオの主たるサウンド(主旋律や語り)はちゃんと聞こえる。ここが、日本車と比べた時の「自動車室内の音作り」の根本の差。

このクルマを走らせていて何よりまず「これだよ、これ」とうなずいてしまうのが、路面の大中小のうねり、あまり尖っていない凹凸を踏み越えていくときの揺れ方。路面の形がまず柔らかくフロントタイヤを押し上げてくる。この動きでノーズが少し持ち上がる感じでふわりと動く。そこでドライバーズシートのわずか後ろあたりを中心に、あまり速くないフロントの上下動、つまりピッチングが起こるが、ふわりとした動きでパタパタとかぎくしゃくとはしない揺れ方である。

そのフロントの上下動等によって、ドライバーシートのちょっと後ろあたりを軸にした感じのピッチングは出るが、ほとんどの場合小さな動きで、そのままリアタイヤが同じ凹凸を踏むところに移行する。

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当然、後ろから車体を持ち上げ、次に下に向かう動きが起こる。ほとんどの場合、この前後の乗り越えによるキャビンの揺れはごく自然な形で前〜後ろと連続して小さなピッチングを感じさせつつ、キャビン全体はフラットに上下方向に揺れる動き。特徴的なのはその先で、最初の上下動の波が次の周期に移行していく中で、ストロークがさらにふわりとしてくる。つまり揺れの2周期目で最初にちょっと柔らかく持ち上がる動きがあって、その波のピークが丸い感じ。そこから車体全体としては後ろが少し多めに沈み込む感覚で下に向かう動きに移る。ここでは、柔らかいけれども何か腰のあるものに受け止められるような、柔らかく止まる動きが生じつつ、揺れの周期が伸びながら後ろから伸び方向に転じる。その伸び側ストロークが半分ぐらい戻ってきたところから減衰がおっとりと効いて、潮が引くように揺れがおさまっていく。

この、生き物の筋肉の柔らかい収縮をイメージさせるような、他のクルマよりも長周期かつ柔らかな上下動を伴う揺れ方(もちろんどちらかと言えば前よりも後ろの沈みこみ~浮き上がりのほうを大きく感じることが多い)、これが我々をして「フランス車らしい」と言わせる揺れのリズムである。これがフランスの「道」の形状と舗装、そこをけっこう速いペースで走るのに合わせた、昔からのフランス流クルマづくりの産物である…ということについては語り始めると長くなるので、ここではいったん打ち切る。

この試乗車は「GT」と呼ばれるグレートで(導入段階の今、日本向けはこれだけ。エンジンがディーゼルとガソリンの2種)、ミシュラン・パイロットスポーツ4を履いている。そのケース(タイヤ骨格)がいったん暖まると、40~60km/hの一般道走行であっても、橋梁のジョイント段差等の角張った硬いエッジを踏んだ時こそ、多少「ドタン」とくるショックや、ばね下がブルブルッと震えることはあるものの、それよりマイルドな路面凹凸ならば、素直にしなやかに、その路面形状をエンベロープしていく。

またKYBフランスの3重筒・外側別体バルブ式可変ダンパーの仕込みも良い。このあたりは別途述べる。