Posted 21 May, 2020

Jeep Wrangler Unlimited 3.6L

パワーパッケージ

エンジンもアクセル踏み始めのところの応答が、いかにもアメリカらしくトルクフル、ということはスロットルバルブの初期開度を増やすことなどによるピックアップ演出ではなく、ちゃんと燃焼による力が出ている。それも含めて排気量3.6LのV6ながら、もっと排気量が大きい印象を受ける。クライスラー各車共用の「Pentastar」ユニットなのだが、アイドリングからトルクを立ち上げる瞬間の燃料噴射量を多めにしているのか、そうした”味付け”はジープ専用にしているのだろう。

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クルマが走り出す最初のプロセス、発進時にはトルクコンバーターがその機能を発揮するわけだが、アクセルペダルを少し押し込んでエンジン回転が上昇、トランスミッション側が静止から回り始めるというところで、その両者の間をつなぐカップリングとしての食いつきがタイトな感触。入出力の回転差があるけれども滑りが大きくならない状態からトルク増幅が立ち上がり、エンジン側のスターティングトルクの厚みを利して強い押し出しを作り、トルクコンバーターとしてはそこでもう直結に近づいている感触がある。すなわちフルードカップリング的特性。その先では日本のATの定石よりも格段に早いタイミング、低い車速からトルクコンバーターをロックアップ。こうして「エンジンの力を使って押す」というチューニング、その方向がドライバーの右足の動きとの関連の中ではっきり伝わってくる。高速道路など1500rpmあたりでクルーズしている時も、アクセル操作に対して、とくに踏み込み方向に対してエンジンの燃焼が即、変化し、クルマを押し出す感触があってとても良い。

そしてこのエンジン、全体に少しゴリゴリした感触(機械的にではなく、燃焼によるトルク増減のリズムとして)の回り方をするのだが、これもアメリカン・テイスト、クルマのキャラクターとよく合っている。妙にスムーズな回り方でないのがかえって良い。バンク角60度なのだが、あえてスムーズ志向ではなく、むしろV8・90度クランク的な回り方、振動、燃焼パルスの感触を作ってある。

メーターの中にはギアポジションが示され、トップギアでは「D8」と出る。これが示すようにATのユニットとしてはZF・8HP搭載。このトランスミッションをジープが手に入れたことも走りの面では大きい。

前述のトルクコンバーターの仕込みから始まって、このクルマに求められる「味」、そして現実の運転と走りの理解を踏まえてしっかりと作られている感触。そして5~8速のステップ比が小さく(ギアレシオがクロスしている)、日本の速度域でも高速巡航では負荷が減ると=ロードロード(平坦路で車両の走行抵抗だけで走る状態)に近づくと、7速、さらに8速へとシフトアップしてゆく。そこからの駆動力要求に対しては7速か6速、時々5速までダウンシフトしつつ対応する。このキックダウン系変速はもちろん、通常加速のアップシフトなど、様々な状況においてシフトの切れ味も良い。変速のキックは明確に伝わるが雑なショックではなく、ポジティブな「ギアシフトした」というインフォメーションとなるリズムの良いもので、しかも変速時間も短く、ジャーク(前後加速度の揺れ動き)は出ない。変速時間が短く(日本車のATはとかく変速“ショック”を逃げるためだけに変速時間を延ばす)、同時に変速ショックが小さく滑らかなのを「洗練」とするのであれば、BMWをお手本とするが、それとは異なる仕立て方。これはこれで良い。車のキャラクターとよく合っている。

ちなみに燃費は市街地で6~6.5km/h、アメリカ本国のフリーウェイが空いていれば日本の高速道路よりも少し速いペース、70mph(110+km/h)あたりを常用することにしつつ走ることになるはずで、そこまでちょっと速度を上げてメーターの瞬間燃費表示から巡航燃費を推測すると、10km/Lかもう少し良くなるか。この体つき、走りのパフォーマンスからすれば納得レベル。

このパワーユニット以外に2L直4+ターボ過給仕様も選べ、アメリカ本国ではV6ディーゼルも設定されている。

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まとめ

全体としてはやはり50mph(80km/h)あたりまでがとりわけ得意。ドライビングに対しても、乗って揺られていても、リズムは良い、が、全体に大雑把、ラフ。どもそれが持ち味、キャラクターであって、それを受け入れて楽しめるのであれば、有力な選択肢。

その一方でアメリカならではのSUVとしては、フォード・エクスプローラー、シボレー・タホなど、おっとりしつつも走るリズムが良く、トータルバランスに優れたモデルが他にもある。だからアメリカに行った時、このクルマをロングツーリングを主にした移動用のレンタカーで借りるか?と聞かれると、それは他の選択肢も含めてちょっと考えさせてくれ、ということになりそう。

でも、そうした「移動の道具」としてだけでなく、「幌馬車」的キャラクターを楽しみ、年に何回かはフルオープンで走る、という付き合い方をするのであれば、他に代わるものはない。

WORD : 両角岳彦