Posted 21 Nov, 2019

BMW X2 20i M Sport

フットワーク

走らせた印象としては、何よりM sportであることのデメリットが多い。車高が下がっている=サスペンションが本来の設計位置よりもパンプ方向に動いたところがイニシャルになっているので、静止状態でリアタイヤには明らかにトーインとネガティブ・キャンバーが付いている。それが目視で分かるほどの変位だ。フロントタイヤのほうが直立している。リアのロワ・トランスバースアームも、荷重1Gではまだ外下がりではあるものの水平に近く、旋回外輪としてはタイヤ横力が車体側ピボットにジャッキダウン方向の力として作用する可能性が高い。さらに19インチホイール+45%超偏平タイヤ(このクルマの場合はピレリ)、しかもランフラットの弱点が非常に多く現れ、これだけで「ジドウシャ」としての価値=動質を大幅に低下させてしまっている。

ちなみにカタログ上の全高数値は1535mmでX2シリーズ共通だが、タイヤ半径はM Sportのほうが12mmほど大きい計算になるので、その分、車体地上高は下がっている計算になる。車両本来の設計車高を「下げる」ことで、良いことは何もないのである。クルマの仕様を設定する側も、選び、走らせる側も、ここを明確に理解する必要がある。

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電動パワーステアリングのアシストは全体に少なめ、すなわち操舵保舵の反力は重めだが、とくに70km/h以上の速度域でアシスト制御の速度項がかなり強く設定してあり、中立付近でほとんど固着したような手ごたえで、微舵の動き出しを妨げる。これだけ中立付近を締めた欧州車はあまりないかも。

このステアリングに対して、リアから車両の進行方向(ヘディング)がずれることがままあり、高速道路を、日本の速度域でさえ、まっすぐ走らせるのはかなり気を遣う。日本車に多いフラフラとしたヘディング変化ではなく、むしろ気がつくと車線の中でどちらかに寄ってはみ出す方向に向かっているという状況が頻繁に発生し、それを固いステアリングで微修正しようとしても、最初の舵が効かないために手が動いてしまってカクッと向きを変えることになり、その繰り返しでフラストレーションが溜まる。

リアタイヤの初期トーイン、さらにバンプステアが加わって、横力左右バランスの乱れなどが多くなっているものと思われる。加えて、硬いスプリング、ダンパーによる接地面荷重の変動も多く、これも進路乱れに少なからず影響しているものと思われる。

旋回のペースを上げ、0.4G程度で比較的緩い半径での旋回、そこからの切り返し、その中で現れる路面のうねりなどに対しては、サスペンションが、とくにダンパーがしなやかに伸縮してタイヤが路面をとらえる感触は悪くない。ニュルブルクリンクの北コースあたりを適当なペースで飛ばすのであれば…。そういう脚のチューニングになっている。

舵を切り込んでしまうと、ステアリングは中立の固さが抜けて柔らかくなる。この変化にも違和感が多い。操舵力・保舵力は軽くはないけれど、まぁ中立よりは感じの良い手ごたえにはなる。ただしタイヤからのニュアンスは伝わってこないので、あてずっぽうのステアリング操作になりやすい。速度とヨーレイト、そこで現れる横Gに応じて、ステアリングをどれだけ動かすかを決められるドライバーなら、そこそこ飛ばすのもおもしろく感じるが、そういうドライビングを習得している人は稀。

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サスペンションの伸縮、車体の上下動についても同様の印象を語ることになる。

路面の凹凸を踏んだときに伝わってくるショックは、やや淡泊、つまりタイヤがどんな路面を踏んだか、それを脚がどう受け止めつつあるか、というニュアンスが薄い。かつ突き上げ量(上下G)は多いが、その後の揺れの押さえ込みは早い。ただし入力が大きく、脚に深い動きを求められると、それなりに伸び縮みする。車体の揺れ自体は、背高プロポーションのクルマとしては比較的少ない。とくに、揺れ残りは、ですが。

タイヤが路面の凹凸に当たったときには、タイヤそのものの接地面の硬さを感じさせるコツンと言う最初の当たりはあるが、そこから非常にうまくショックを受け流す。特に60km/hあるいはそれ以上、日本の高速道路の速度域になると、タイヤが路面凹凸を踏む感触は伝わるが、そこに突き上げ系の硬さが混じらず、路面凹凸通過を不快な振動として感じることはほとんどなくなる。この状況では、路面の凹凸が持つ形状をむしろ滑らかにしたような印象の、スムーズな上下の揺れが続く。ある意味、ヌルッとした転がり感の中で車室側が柔らかく上下する感触となる。

もう少し細かく、路面の凹凸、とくに段差や突起にタイヤのトレッド面が当たった時の感触(一般路の速度域)を観察すると、タイヤのベルトまわりの突っ張り感、気柱振動などを一瞬感じさせるが、そこから前輪側がタイヤからサスペンションへと、非常になめらかに突起を乗り越え、その後で後輪側が柔らかく、しなやかさを持って通過し、そこからサスペンションが少し深めに上下ストロークを起こす。これがこのクルマの基本的な揺れのリズムになっている。