Posted 21 Nov, 2019

Alpine A110

ライド=路面を踏んでゆく感触

タイヤはミシュランのPilot Sportだが、内圧が10kPaほど高いだけでフロントタイヤが路面の段差に叩かれた入力でフロントのロワーアームのピボットあたりに結構ブルブルガタン…という感触の不整振動が伝わる。あまりスパンの大きくないAアーム・レイアウトのせいもあり、またアルミフレームの入力の受け止め方が硬いことも、はっきり見えてしまう振動感触である。ただしタイヤの内圧が指定値(F:200kPa、R:210kPa)で、かつ暖まっていれば、そうした気になる入力振動伝達はほとんど消える。操舵に対する横力の立ち上がりや横方向の踏ん張り感触についても、指定内圧でちょうどよくまとまっている。

この、路面のシャープな段差を踏み越えるとこの感触を除くと、ミシュランタイヤの良さもあって、タイヤが路面を転がりつつ踏んで行く感触、そこから車体側に現れる上下のストローク、揺れのリズム感、しなやかさなどは、かなり良い感触。コックピット空間のフィット感、シートへの収まりと身体を受け止める剛性も相まって、日常的なところから、ある程度ペースを上げて駆ける状況まで、走らせるリズム感はとても素直。自然な感触である。これだけでも最近の過剰なブランド系パフォーマンス強調型、過剰なタイヤを装着したクルマたちよりもはるかに、日々自然体で走らせることができる。

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面白いことに、というか当たり前だが、足(ペダル面)の先に燃料タンクがあるので、満タン(45L)と空ではほぼ30kg前輪荷重が変わる。これによってもフロントの上下跳ねのリズム、タイヤの接地感が微妙に変化する。揺れのしっとり感、タイヤの接地面が路面についている感触と言う面では、満タンから少し減ったあたりがいちばん良さそうである。満タンだとちょっとばね上が重い。空に近づくと路面から押し上げられた時の持ち上がり~戻りのリズムが速くなり、若干バタバタする。

路面が荒れているカントリー路や都市高速を、一般ドライバー+αレベル、0.2~0.3G以下で走る中では、タイヤへの路面衝撃→フロント・ロワーアーム付け根の突っ張り、ドタンッ〜振動でタイヤ〜ステアリングの保持関係が一瞬甘くなる。

高速(日本の)巡航ライントレースでも同じ現象が起こることがままあり、進路、車線内の車体位置の揺ら ぎが起こる。すっきり、意のままに、とまではいかない。(986-987中期ボクスター比)

前後インホイール型ダブルウィッシュボーンの弱点もありそうな動き、揺らぎ。

パワーパッケージ

パワーユニットはパッケージとしての揺れ動きなどはうまく押さえられている。走りの中で無駄な動きが出ることはない。

アクセルワークに対する、とくにバランス・スロットル状態などパーシャルからの駆動力の発生、そこからターボ過給の立ち上がりへ、という大事なところのつながりはさすがにちゃんと仕込まれている。ただし切れ味があるレスポンス、出力特性とは言い難い。

何より興覚めするのが、パーシャルから少し深めにアクセルを踏んだときに排気音がちょっと変わり、妙にパタパタしたドラミング系の音が混じってくるところ。この時「シュワー」という擦過系の吸気音も合わせて、エンジンが発する音が頭の後ろから来る。サイドウィンドウの後縁を内側に巻き込んでエンジンルームへのインテークにしてあるが、そこからエンジンまわりの音が出てくる感じ。アクセルオンの直後に出るパタパタしたノイズは数舜で消え、そこから先はルノーの4気筒のさらっ(ざらっ)とした音であり、回り方にも癖は無い。ターボ過給が効いたところからのトルクもオーバーシュート少なく、そこからのアクセルオフでちょっと息を吐くあたり、ちゃんと過給をかけてトルクを出していることが伝わってくる。

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色気はないけど日常はもちろん、スポーツドライビングまで必要十分。これはこれでルノー流。

燃費も悪くない。ツーリングで14km/Lあたりは普通に出そう。

現状のスポーツモード(セレクトボタンはステアリングホイール上)はごく類型的。スロットル開度、シフトスケジュール、EPS重く、ダンパー低速締め。選択する意味はほとんどない。

ブレーキは、RHDにもかかわらず、摩材が接触、摩擦力が発生する感触もわかりやすいし、そこからは踏力コントロールで減速度を決められる。これも「走らせやすい」ということでは大事な要素。

まとめ、として

他に選択肢がないゾーン。ボクスターも今は昔。現行モデルでは快感レベルに大きな差はない。ケイマンは語るに及ばず。

ヒト~クルマのフィット感、見た目から入って行く時の色気、などではこちらが上だし、他とは明らかに違う個性。今が旬のクルマかと思う。

ここまでの口述はPure、つまり一体シェルでリクライニング機構もないシートに始まり、余分な便利装備のないグレードでのもの。この後、いわゆる上級グレードのLinegeとも付き合った。動質の内容は、とくに運動特性、パワーパッケージについてはまったく変わらない。でもなぜかクルマとの一体感がシンプルに、座って走らせるとスッとできあがり、余分なことを何も考えずに走り続けられる、という意味では、Pureのほうが個人的に好ましい。一体シェルシートをシートレールに固定するプレートの剛性に始まり、着座した身体と車体の間が思い切りソリッドで、意味のない微振動が混じってこないことが大きいかも、と今になって思い返している。

WORD : 両角岳彦