COVID-19禍の中の学生フォーミュラ活動 ~年度替わりを挟んだここ半年の様子を聞いて回る。
『全種目完遂』を目標にするチームでは…

近年上位チームのエンジンの変更が続いている。

一昨年は、近年ずっと安定した速さを見せる日本自動車大学校が、ホンダの4気筒からヤマハの2気筒に変更。

昨年は常にチャレンジングなマシンを作る京都大学が、ヤマハの単気筒からカワサキの2気筒へ、というビッグチェンジを敢行した。

そして今年は京都工芸繊維大学が、長年のコンビネーション、3度の優勝を果たしたスズキの単気筒からヤマハの2気筒ユニットへの変更を発表した。

少しでも上のポジションを目指してパワーユニットを変えるのは上位チームに限ったことではない。

まだ全種目完遂を経験していないチームであっても、可能性を求めてこの決断に向かい合うことがある。

編集部・注
ここで「全種目」を「完遂する」と表記しているのは、学生フォーミュラの競技はけして「走る」だけではなく、デザイン、コスト、プレゼンテーションの「静的審査」3種目を全うし、安全を中心に複雑な要件を求められる車検を通過して、アクセラレーション、スキッドパッド、オートクロス、その結果を持って最終種目のエンデュランスと、4種目の「動的審査」の全てを完走して初めて「全種目」の審査・採点を得られるから。毎年の大会で全種目を完遂・完走し、かつ提出物遅延などによるペナルティがなかったチームには、日本自動車工業会会長賞が授与されるが、2018年大会では現地に車両を持ち込み採点結果を残した94チーム中でこの賞を手にしたのは37チーム、2019年大会では93チーム中の27チームという、なかなかに厳しい状況である(海外チームを含む全体の数字)。もちろん、動的競技完走のポテンシャルを持ちながらリタイアを喫するチームも少なくはない。しかし今、日本でこの大会を目指し、エントリーできるまでに育ったチームはおそらく100を越える数に上るはずだが、その過半は「全種目完遂」を目指す段階にある。

千葉工業大学は2005年に研究の一貫としてチームを発足。その後、休止期間を経て、2012年に現在のチームを再始動させた。それから現在に至るまで全種目完走を果たせていないが、彼らもまた今年に向けて、既存エンジンからの変更を検討している。

チームリーダーは「思い入れのある『リジットサス』をもって大会で存在感を示したい!」「まずは完走できるクルマを手に入れたい」「そのためのエンジン変更だ」と語る。

ここ数年、やっと車両をまとめ上げ、静的審査に向けたレポートなども含めて大会参加まで漕ぎ着けられるようになった中で、研究室時代から受け継いできたエンジンは、始動もままならない状況がずっと続いていたのだという。しかしエンジン変更に関しては、チーム全体が悩み、OBも含めて議論が沸騰したとのこと。

もちろん彼らが全種目完遂のために抱える課題はエンジンだけではない。

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後輪リジッドアクスル+デフばね上搭載(いわゆる「ド=ディオン・アクスル」)に挑戦中(2019年車両から)の千葉工業大学チーム、2020年車両設計案。(図版は同チーム提供)

彼らの実働メンバーは10人にも満たず、計画どおりにマシンを完成させられない年が続いてきた。上位チームの多くが大会5ヶ月前にシェイクダウンを果たす中、昨年、彼らがシェイクダウンを果たしたのは大会1ヶ月前。大会ではエンジンが始動不能となって車検を通らず動的審査に進出できずに終わった。2017年は何とか全種目完遂直前、エンデュランスのゴール1周前でリタイアを喫しているが、これが現状、彼らのベスト・リザルト。

大学からの予算も上位チームの1/3程度で、さらに今年は新型コロナウイルス、大会中止などの影響によって、大幅に減額される見込みとのことだ。支援を見送るスポンサーも出始めたという。

そんな厳しい状況に置かれ、自らを『弱小チーム』という彼らだが、パワーユニット変更というチャレンジングな課題に挑む姿勢は、上位チームと変わらない。

彼らを支援するエンジン・メーカーは『弱小チーム』にも他のチームと変わらない熱量で彼らに接してくれるし、ライバルチームは彼らの問いかけに対して惜しげもなく自分たちのデータを提供してくれるという。

手を差し伸べてくれる仲間の思いに応えるべく、そして限りある学生生活の中でエンジニアとしての意地を示すべく、『弱小チーム』は彼らなりに、静かに準備を進めている。