Posted 05 Aug, 2020

“ちょっとだけ大人”の目で見守る
「日本の学生フォーミュラ」

COVID-19禍の中の学生フォーミュラ活動
~年度替わりを挟んだここ半年の様子を聞いて回る。【7月末時点】

WORD 蛙田 三也

大学キャンパス、ロックダウンの中で

COVID-19感染拡大の影響は学生フォーミュラにも及び、4月には今年の日本大会中止が発表された。この中止発表前後からそれぞれの大学が、対面での講義や研究はもちろん学生のキャンパス入構も差し止める措置を採り、当然ながら学生フォーミュラを含む課外活動も自粛せざるをえない状況となった。本稿を執筆している7月時点でも地域差、大学個々の判断の差はあるにせよ、実習や実験などを要する講義科目や卒業研究などに限って週に何回かキャンパスに入るだけ、という状態が続くところが多いと聞く。

こうした環境下にあっては、ほとんどのチームの活動が止まり、今年のマシンたちは作りかけのまま行き場を失うことになった。

ここで学生フォーミュラとその活動について詳しいことをご存知ない方々のために付け加えておくなら、例年であれば、そして実戦力の高いチームであれば、3月の春季休暇の時期こそは骨格から部品に至る車両製作に集中、4月か、遅くとも5月初めには基本的な組み立てを完了して“接地”(筆者注:車体骨格にサスペンション、ハブ、タイヤが組み付けられて自重を支えられる状態。多くのチームがこれを車両製作におけるマイルストーンの一つに設定する。)、そしてシェイクダウン走行へ。

それと並行して“新勧”、すなわち新入生を勧誘してチームの構成員(と活動費)を確保するための重要な時期に、現車を前にアピールする機会も、今年はいまだなく、大学や学生団体が用意したリモート・イベント、チームのウェブサイトやSNSなどだけでは自分たちがどんなに面白いことをしているか(厳しいか、は後で経験してもらうことにして)も難しい、という事態もまた、年単位の活動継続にも陰を落とし始めている。これは学生フォーミュラに限ったことではないのだが。

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岡山大学チーム、シェイクダウン(7月5日)の状況 ( 同チーム提供 https://twitter.com/OUFP )

さらに6月には量産コスト想定、コンセプトから詳細設計、基本構造計算など、大会の現場で「静的審査」の質疑応答の基本となる各種レポートの提出期限が続く。大会が中止になった今年は、それらにかかりきりになる労力からは解放されたことにはなるが、逆に毎年メンバーが入れ替わりつつ進んでゆく学生活動としては、全体の構成手法から細かなノウハウに及ぶ様々な「伝承」が難しくなる、という面は無視できない。

そして7、8月は車両を徹底的に走らせてデータを収集する一方で、不具合対策、追加部品の制作と機能確認などにひたすら勤しんだ上で、9月初旬の大会に臨む…というのが、日本の学生フォーミュラにおける日程計画の基本になってきている。もちろん、そうした目論見どおりには進まないのが、とくに学生の課外活動においては常、ではあるけれども。

学生フォーミュラ日本大会運営側は、来年の大会開催を予定しており、各チームはひとまずそこに向けて軌道修正をしていくわけだが、作りかけの今年のマシンをどうするのか、そこを聞いてみるだけでも、各チームの事情や思惑が浮かび上がってくる。

多くのチームはテストカーとして製作し、新規アイテムの評価に使う予定、とのこと。タイヤ、エンジンのビッグチェンジを行うチームにとっては、早くマシンを完成させて実走行による評価を始めたいところだろう。1年生、2年生にとってはトレーニング、そして伝承としての意味合いも大きい。

活動資金が少ない、支援が繰り越された等の理由から、今年のマシンを完成させて来年大会まで持っていく、という選択をするチームも少なからずあるようだ。ただ毎年の大会で車検を通せない、動的審査を走りきれない下位チームにとっては、基礎を構築する時間が得られるかもしれない。

また2021年大会にターゲットを移し、ここしばらくの間をその準備期間、つまり設計や各種の検討に充てることにして、あえて今年のマシン製作を中止したチームもあれば、不本意ながら今年のマシンをお蔵入りにせざるをえないチームも出てきている。東京近郊のチームからは「活動再開は当分先かもしれない」という声もあり、まだ再開の目処が立たないチームも多く、今年のマシン完成を諦めているチームも少なくない。

そんな中で先日、岡山大学がいち早く活動を再開し、今年のマシンのシェイクダウンを発表した。チーム公式Twitterにアップされた動画には、軽くホイールスピンをしながら発進する様子が映っており、走り始めから元気な姿を見せていた。活動休止前には走れる状態にあったようで、待ち遠しい活動休止の2カ月だったろう。

彼らの話を聞いてみると、「(今年のマシンをどう使うかは)新入部員の人数次第といったところ」と、リソースの状況を見ながら判断してくとのこと。こうして、いつもならその立地から情報収集や走行機会等でハンディを抱えていたチームが比較的早く活動を再開し、多少であってもアドバンテージを築いている点は例年と異なる。

その他でも、筆者のところに集まってきた情報の範囲では、鳥取大学、岐阜大学、富山大学、山梨大学などが活動を再開している。いつもとは異なる事情を抱えながらも、学生たちは少しずつ来年大会に向けて動き始めたようだ。